2009年12月29日火曜日

毒舌書評

米原万里が好きだった。
天性の文章家で、毒のあるユーモアが秀逸だった。
ものすごい読書家で圧倒的な博覧強記。
そのことは『打ちのめされるようなすごい本』
を読めば、すぐわかる。

その米原さんが2006年に早世してしまった。
残念至極である。が、米原さんはちゃんと後継者を
残しておいてくれた。文芸評論家の斎藤美奈子である。

米原曰く、斎藤の書評は、
《類い希なる毒舌の才と芸が冴え渡っていて》
巷に氾濫する悪口本にはない、《貶す書評の鑑》だという。
そこまで言われたら読まねばなるまい。

で、さっそくアマゾンで注文。
『誤読日記』『文壇アイドル論』など数冊を読んでみたが、
僕には『趣味は読書』が一番おもしろかった。

斎藤に言わせると、世の読書人と称する人種は、
今や《絶滅危惧種》の類らしい。
彼らはしばしば、「ベストセラーなど読みたくない」
などととうそぶく。が、その手の輩は、
《「あんな大衆食堂のメシなど食いたくない」
とうそぶく嫌味ったらしい美食家と同類である》
と冷たく切り捨てる。

また哲学者の中島義道をからかって、
《哲学者なんて(と差別的にいうが)、労働者としても生活者としても、
もともと失格なわけですよ。じゃないと哲学者にはなれないし、
失格だが、人類の貴重な文化財だから社会が特別に保護して
やっているのである》
と、これまたケチョンケチョンである。

そういえば、この「特別保護動物」のお仲間が、
僕の近所にもいる。僕には斎藤ほどの度胸も根性もないので、
この〝動物〟にひょっこり出会ったりすると、
つい深々とお辞儀をしてしまう。
彼が生活者として失格かどうかは知らない。
が、「キリスト様」と陰で呼ばれてるくらいだから、
たぶんいい人なのだろう。

余談はさておき、
斎藤美奈子女史に、まずは注目あれ。

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