2009年12月27日日曜日

Love me tender!

自慢じゃないが、僕はPTSD患者である。
心的外傷後ストレス障害というややこしいやつだが、
僕の場合は閉所恐怖症といったほうが話が早い。
パニック障害の一種で、満員電車につめこまれたり、
窓のない狭い部屋に閉じこめられたりすると、
たちまち発作が起きる
美人と一緒だと不思議に治まってしまうのだが……)。
ひどいときには呼吸困難に陥る。

10年ほど前に、突然発症し、通院が始まった。
すぐにPTSDと診断され、今も薬が手放せない。
閉所に対する恐怖は尋常ではなく、数年前は
過呼吸症候群まで引き起こし、ほとんど呼吸ができなくなった。
大げさに聞こえるだろうが、一瞬、死を覚悟した

眼球を左右に動かしながら過去の記憶をたどっていく
EMDRという最新の治療法も試みた。心的外傷の
原因を突きとめ、傷ついた神経回路にバイパスをつくる治療法である。

その結果、小学生の頃に、プールで溺れかかった
記憶が呼び戻された。また、まっ暗な狭い部屋に閉じこめられ、
天井の蛍光灯をジッと見つめていたという記憶もあった。
その蛍光灯は接触が悪いのか、絶えずチカチカと光っていた。
その光を見つめていたら、突然、呼吸ができなくなったのだ。

おそらくその時に、トラウマができてしまったのだろう。
今はだいぶよくなったが、地下鉄や飛行機に乗れない時期が
長く続いた。地下鉄は一駅ずつ降りては息をととのえ、
エイヤー! と自分を叱りつけるようにして、次の電車に飛び乗った。
そしてまた隣の駅で降りて深呼吸。この繰り返しだった。
目的地にはなかなかたどり着けなかった。

僕の場合、自分の身体を締めつけるもの、
動きを規制するものは、すべて排除する必要があった。
それらすべてが、
閉所に閉じこめられた時の精神状態を誘発するからである。

タイトな服やネクタイはだめ。
ある時、左手の結婚指輪が気になり始め、脂汗が出てきた。
じっと見ていたら急に息苦しくなり、あわてて外そうとしたが、
肉に食い込んで外れなかった。
僕はほとんどパニック状態になった。

宝石店に駆け込み、急いで切断してもらった。
指から外れたときの解放感といったらない。
深く息を吸い込んだら、全身から力が抜けてしまった。

傍から見ると、いい年をして何をやってんだ、
と思うかもしれないが、PTSD患者にしてみれば、
一分一秒が命がけなのである。

肉体に障害を抱えているもの、心に障害を持っているもの。
人はさまざまな病気や悩みを抱えて生きている。
五木寛之風に言えば、
人は生きているだけでもう十分立派なのかもしれない。

女性をナンパする際に、そっと結婚指輪を外す男がいるが、
僕はその必要がないので、ずいぶん助かってる
(←何が助かってんだよ!)。

←一番苦手なのが満員電車。
こんなのに乗り合わせたら、
呼吸困難になり気絶してしまう。

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