2010年1月4日月曜日

犬鍋とビーフカレー

寒さが厳しくなると補身湯(ポシンタン)が恋しくなる。
愛犬家は顔をしかめそうだが、犬鍋のことである。
これを食べると、ほんとうに身体が温まる。

この鍋、新大久保のコリアンタウンで食べられる。
韓国出身の親友Tさんが案内してくれたもので、
Tさんとはもう20年来のつき合いだ。

犬鍋に関しては、欧米諸国や動物愛護団体から、
やいのやいのと言われている。野蛮なんだそうだ。
イルカやクジラを食べる日本人も、同じく野蛮人扱いされてるから、
何かと反目し合う韓国人と日本人も、
野蛮人同士でささやかな共闘が組めるだろう。

韓国ではふつう黄狗(ファング)と呼ばれる犬を食用にする。
ニンニクのきいた唐辛子ベースのスープには
長ネギやセリ、エゴマの葉などがたっぷり入っている。
この鍋をハフハフほおばりながら、
ソジュ(焼酎)やマッコリ(濁酒)を腰が抜けるほど浴びるのだ。

犬鍋は滋養効果が高いという。そのため、
昔から術後の患者などに医者がすすめた。
虚弱体質の人がスッポンの生き血を吸うのと同じだ。

欧米人は牛や豚、愛くるしい仔羊を喰らい、
また残酷な給餌法でガチョウから
フォアグラ(あれって、脂肪肝なんだよね)をとってるくせに、
他国の伝統ある食文化に口出しすることをやめない。
あの独り善がりのエスノセントリズム(自国文化中心主義)
は、どうにかならないものか、といつも思う。

犬やクジラはたしかに可愛いし利口だが、
食ってはいけないという法はない。
もともと食の体系が違うのだ。

インド人はビーフカレーを発明した日本人を
内心不快に思っているだろうが、
「神聖な牛をカレーの具にしないでくれ!」
とインド政府から申し入れがあった、なんて話は聞いたことがない。

別にイカモノ食いを自慢するわけじゃないが、
カラスだってタヌキだって、食べてみれば実に美味い。
カラスの刺身なんて、こたえられないうまさだ。
この国には、伝統的にカラスを食している村だってある。
他国者がとやかく言う筋合いのものではないのである。

メルマック星人のアルフ(NHK教育テレビ『アルフ』の主人公)は、
ネコが大好物だという。しかし地球にあっては、その
大好きなネコを食いたくとも食えない。アルフにしてみれば、
メルマック星人の神聖な食文化を、地球人ごときに
「とやかく言われたかねーや」という心境だろう。

イヌだろうとカエルだろうと、美味いものはうまい。
というわけで、久しぶりにTさんを誘って補身湯をつっつこうかと思う。

余談だが、イヌの字の入った「犬塚さん」とか「犬飼さん」は、
韓国では丁重な扱いを受けないかもしれない。
イヌの字を姓に持つこと自体が、韓国人には信じられないことだからだ。
日本人にしてみれば、それこそ大きなお世話なんだけどね。

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