2010年2月9日火曜日

歴女な私

坂本龍馬が空前のブームなのだという。
どうやらNHKドラマ「龍馬伝」の影響らしい。
なにしろ龍馬役があの色男の福山雅治だ。
武田鉄矢だったら、どうなっていたか。

草食系の優男をとことん毛ぎらいする僕としては、
福山などミーハーの姐ちゃんや若いツバメをほしがるおばさんたち
の恰好の愛玩動物だと思っていたが、実際ドラマを見てみたら、
意外やハマリ役なのでびっくりした。

実際の龍馬は、色男にはほど遠い、ヒラメの親分みたいな
顔をしていた。仕事で高知に行った際、桂浜の龍馬像を
見上げ、とくと観察してきた結論だ。しかし、ヒラメはヒラメでも、
並のヒラメのつら構えではなかった。

話変わって昨夜、長女が「わたし、歴女になる」と厳かに宣言した。
歴女(れきじょ)とは歴史好きの若い女性たちのことらしい。
おおかた流行に弱い長女が、会社の同僚か何かにそそのかされ、
その気になってしまったのだろう。

長女は、だしぬけに、
「お父さん、『竜馬がゆく』があったら貸して!」
とリクエストしてきた。誰でも知ってる司馬遼太郎の出世作である。
もう何度読み返したかわからない。気に入った字句には傍線が引いてあったり、
書き込みがしてあったりするから、すこぶる読みにくいとは思うが、
喜んで貸してあげた。

文庫本で全8巻。自ら「レキジョ」を自任するからには、
ぜひとも読破してもらいたい。龍馬という人間の
スケールの大きさと人間的魅力に、おそらく圧倒されるだろう。そして、
あの時代の日本人が、いかに薄氷を踏む思いでがんばってきたか。
欧米列強の植民地にされまいと、どれほどの知恵を絞ってきたか、
たちどころにわかるだろう。

ブームなどいつだって泡沫(うたかた)のごときものだ。
歴女が飽きられれば、次の流行がまたアブクのように生まれてくる。
父親としては「レキジョ」などにならなくていいから、
ごくふつうに歴史に興味を持ってもらいたい。

鉄血宰相ビスマルクはこう言った。
《愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶ》と。

いや、もとい。「レキジョ」にも「ケンジャ」にもならなくていい。
そんなものになったら、ますます婚期が遠のいてしまう。
また龍馬を理想の男と思ってもらっても困る。

フクヤマ龍馬などとんでもない話だ。
そんなありもしない理想を追いかけたら、
地球の果てまで婿探しに行かなくてはならなくなる。
それじゃあ、文字どおりの歴女(歴史を刻んだ女)になっちまう。

だから娘よ! 何にもしないで、ジッとしていておくれ。

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