2011年7月11日月曜日

坊主丸儲け

菩提寺の住職が、やおらこう切り出した。
「お母さんの趣味や性格を教えてもらえますか。
戒名を考えるのは、これでなかなか難しいものでね」
すると長兄は、ムスッとした顔で、
ただのふつうのオンナです」の一言。とりつく島もない。

慌ててボクが「世話好きで、三味や小唄もやる粋なところもありました」
などと取りなし、剣呑な雰囲気を和らげた。姉は隣でヒヤヒヤしていた。

その前に前哨戦としてひと悶着あった。
「戒名料も含め、セットでウン百万円でいかがです?」
というやりとりがあったのだ。(セット料金? 居酒屋かよ、ここは……)
じゃあ、戒名はこっちで考えますからいいです」と、これはボク。
坊さんは呆れ顔で、たちまち険しい顔に。
ボクは姉に太ももを思いきりつねられた。

母の戒名は「永寿慈静大姉」。道号が永寿で法号が慈静、
この法号が本来の戒名で、生前の名前から一字をとって
つける決まりになっている。そして位号は大姉だ。
この月並みな戒名(母よ、許せ)の、いったいどこが難しいのかね。

戒名には院号、殿号、居士、信士、大姉、信女といった〝階級〟
があり、高い位の戒名をつけてもらいたければ、それなりの
謝礼を包まなくてはならない。戒名は謝礼の多寡で決まる。
「いい戒名をいただいてね」と、かつて叔父の葬儀の時に叔母が周囲に自慢していたが、
そんなもん、金さえ積めばいくらでも位階は上がる。

先頃亡くなった評論家の谷沢永一氏は、
殿と院と信士とでは、悟り方の奥行きが違うのであろうか。
その細かな差違を誰にも解るような一覧表にしていただきたい
と皮肉っていた。そう、「信士は5000円ポッキリです。ただし悟りは生半可」
とかね。これじゃまるでキャバクラだ。

さらに続けて、
《戒名は、仏教の本義とはなんの関係もない余計なさかしらである。
戒名は、我が国の坊主が、信徒から金銭を搾りとるために考えだした
世にも狡猾な策謀にすぎないのである》(『冠婚葬祭心得』より)
と、これまたあっさり切り捨てる。

位牌にしたって、そもそも仏教に位牌はない。輪廻転生だから、
位牌として遺すことはない、という理屈なのだ。儒教からきている
という説もあるが、日本古来の習慣からきたものという説もある。
古来日本には〝依り代(よりしろ)〟という神様が降臨するための
印があった。それが仏教と結びついて位牌となったのか、それとも
儒教と結びついたのか、甚だハッキリしないのである。

もっとも、49日の法要はインドの「バラモン教」から、100日忌、1周忌、3回忌は
中国の「儒教」から、7回忌、13回忌……以下33回忌までは日本の「神道」から
きている、ということは分かっている。法要といっても仏教とは関係のない宗教や
習俗がいろいろブレンドされているのだ。そしてそれぞれがしっかりと金儲け主義と
結びついている。

ああ、母よ、俗界はかくもややこしく醜いのです。
あの世だって、たぶんややこしいでしょうが、
どうか迷わず成仏してください。
南無阿弥陀仏。

13 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

勞さん: 我が家の坊さんに腹が立つ事しばしばです。田舎のじいちゃん・ばあちゃんの
月命日に読経をお願いすべく家内なり私なりが田舎に通うのですが”ああでもない、こうでもない”と勝手な理由を付けて来ない事が多々ありで、一度たまりかねて”本山に言いつけるぞ”と怒鳴った事もあります。それでいてお金の話になると田舎の普通相場を超えたものを要求する強欲さ。講話も屁でもない事を話すのみで有難くもちっともない始末。”人間通”の著書を読めと言いたい。勿論立派なお坊さんも
沢山いることは間違いないけれど。。。。。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

匿名様

おっしゃるとおり、
立派な坊主もいることはいます。
ボクの親友は新潟のボロ寺の
住職ですが、清貧を絵に描いたような
生活をしております。

でも、近頃の坊主の大半は仏道修行より
ソロバンのほうが得意なようで、
外国製の高級車を乗り回すだけでなく、
夜な夜な、よからぬところへ
出入りしているようす。

こうしたガリガリ亡者には
谷沢さんの『人間通』を
ぜひ読んで欲しいものですね。

なかがわ さんのコメント...

私は、こう奥さんにいつもお願してます。(中川)
わたしが死んだとき、葬式は一切不要です。死後法要の一切を禁じます。葬儀屋も不要です。
坊主、位牌、戒名、骨壷、納骨一切不要です。別に死んだからって何もしてない、何もしてもらっていない菩提寺にお金を払いたくありません。別に菩提寺に恨みがあるわけではありません。ただもったいないと思うだけです。檀家の系図上、墓石上はいないことで結構です。
死亡のときは、死亡届を役所に届けて、ただ火葬の手続きをして、骨拾いをせずに、そのまま焼き捨てていただきたいです。一般的に骨壷に移したあとは処分されますので、その要領で、骨の姿をお披露目してどこが悪かったとか、喉仏がどうとかいわれたくないです。もしできれば、高温燃焼で何も残さずに焼いてほしいです。そして、そのまま廃棄処分してほしい。散骨なんて迷惑なことはしたくありません。何か捨てるだけでも費用がかかる時代に、納骨とか散骨とか嫌です。
何も残さず、まるで初めからそんな人はいなかったように逝きたいです。
家族にもできるだけ早く忘れられたいです。写真も捨ててほしいです。
死者が生者に面倒をかけるのは必要最低限にしたいです。
わたしは病気のデパートだと思いますので、献体はOKです。どこかにプラスチックで固まった臓器が展示されるのはかまいません。使えるところがあれば使えるうちにどうぞ持っていってください。角膜でも、肝臓でも----あまり健康とはいえないので無理かもしれませんが。
わたしは、先祖の誰も敬ってお参りなんかしていませんから、当然そうされることなど望みません。
そのうち遺言状も電子化し、執行の手続きも自分でネットで予約できるようになるでしょうし。臨終間際に携帯電話の端末をタッチするだけになっているかもしれませんね。
どうか家族がこの遺言を守ってくれますように。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

なかがわ様

本来、仏教は葬式をやらないといいます。
葬式と仏教が結びついたのは江戸時代から
だそうです。

その証拠に、いまでも南都六宗
といわれる奈良の寺院では
葬式は一切やりません。

日本の葬儀費用の平均は231万円。
アメリカが44万円、イギリスが12万円、
ドイツが20万円、韓国が37万円といいますから、日本のバカ高さはズ抜けています。

ドイツなんかでは焼骨は
宅配便で送られてくるそうです。
喉仏もへちまもないのです。

なかがわさんの「葬式無用、戒名不要」
はよーくわかります。
ボクもそう願いたいものです。

帰山人 さんのコメント...

祖母「きみ」が死んで縁者に発表された戒名は「喜室明美清信女」…一同、「おい、きむろあけみだってよ」、「カッケイ~、安室奈美恵みたいジャン」…坊さんは呆れ顔、ザマミロ(何が?)。通夜では孫・曾孫が代わる代わる祖母の遺骸に添って寝て、ピースサインで記念写真…弔問客は呆れ顔、ザマミロ(何が?)。
今日の悪習「葬式仏教」の原点は江戸時代の寺請・檀家制度にあるのでしょうが、それ以前に葬制(葬送儀礼)自体が無かったワケじゃあない。「本来、仏教は葬式をやらない」のは仏教が「教相」重視の宗教だからで、インドでも中国でも日本(南都六宗など)でも「事相」としての葬送儀礼を行なったり墓を作ったりする例はあります。まぁ、原則として「受戒」を受けた正真の信者に限られるけれど…
葬式仏教の戒名や墓を無用とする論と、葬制の儀礼習俗を否定する論は、少し距離を離して考えるべきかもしれません…あ、私はいかなる神仏にも信心も帰依もしていないし、実家近くの坊主は私の代でも檀家だと思っているようだけれど、破戒の限りを尽くしてクソ坊主どもを地獄の道連れにしてやるつもり(←あ、矛盾しているな:笑)。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

帰山人様

珈琲だけでなくお墓や
葬式にも詳しいんですな。
てことは、帰山人は儒家の流れを
くむものなのか……ふむふむ。

みんな母のために
ありがた~いお言葉を
アリガトネ。

母はきっと迷って
化けて出てくることでしょう。

会いたいなァ、かあちゃん。

匿名 さんのコメント...

年中登場の匿名さまではない別の匿名です。

京都の祇園は坊主で成り立ってます。
とくに税金で揉めに揉めた清い水のお寺は凄いらしい。

♪ウワサがぁ ウワサ呼ぶけどー
 ウワサ以上の坊主・・・・・・♪
  (原曲・卑弥呼で)

だからと言って、
遺骨を環状線に放かしちゃダメよ。

と言ってるオイラも、
生臭~い坊主の孫です。

なごり雪 さんのコメント...

イケネッ!
匿名ポッチクリックしないで送信しちゃった。
ハイ!わが祖父は、
臨済宗円覚寺派の住職でした。
今は伯父が住職です。(かなりケチです)

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

別の匿名様、しかしてその実態は……
な~んだ、なごり雪の兄ィじゃないのさ。

へーえ、なごり雪さんのジイさんは
臨済宗のお坊さんでしたか。
どおりで、馬子の、じゃねえ孫の貴兄も
どこか有徳の士の趣を感じさせるわけだ。
(んなわけねーか)

生前は、母が大変お世話になりました。
なごり雪さんの心入れのお豆腐で、
長生きさせてもらいました。

Nick's Bar さんのコメント...

ROUさん、

こんにちは。


まぁ、ROUさんが葬式をやらないのは勝手ですが、お嬢様がたと奥様と一応しみじみとお見送りだけはしてあげますので、御安心ください。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

相変わらずお優しいお言葉。
痛み入ります。

ところで、ボクの弔辞は
その格調の高さ、他を圧する迫力、
余韻の深さ等で、会葬者たちの
圧倒的な支持と共感を得ております。

ですからNICK様、
ボクのことはほっといて、
どうかお先に逝ってください。

歴史に残るような
弔辞を読んで差し上げます。

Nick's Bar さんのコメント...

ROUさん、

こんにちは。


そういえば、最近「長幼の序」なるお言葉をのたまわった方がいらっしゃいましたが、その辺は私も心得ておりますので、後から追いかけますよ。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

後でも先でもいいけど、
何といいますか、
めっちゃ暑いですなァ。

もうグッタリしちゃって、
マグロがのびたみたいに
居間の床(ひんやりして気持ちいい)
にぶっ倒れていました。

ここまで暑いと、外は危険ですね。
みんな怒りっぽくなってるから。

特にボクは危険。
非常に凶暴になります。
先日の警官とのやりとりを
思い出すと、まるで
ジキル博士とハイド氏です。