2011年2月26日土曜日

NZの大地震

ニュージーランドの大地震には心が痛む。
留学生を送り出した家族の不安と悲しみは
いかばかりか。

クライストチャーチという町は、わが家にも
少しばかり因縁がある。以前、一晩の宿を
貸してあげたAlanaという留学生が、この近くの
町に住んでいるからだ。

それにボクの長女も1ヵ月の短期だったが、
クライストチャーチ郊外の老夫婦の家にホームステイした。
朝はパンにレタスを挟んだだけの質素な食事で、
いいかげんうんざりした、と長女は夫妻のケチケチぶりに
憤慨しておったが、さてそのしぶちん夫婦、
ぶじに生きておられるだろうか。

火山が噴火したり、洪水が起きたり、大地震に
見舞われたりと、ここんところ自然災害が続発している。
なにか地球に異変が起きているのだろうか。

それとも驕り高ぶった人類に対し、天が怒っているのか。
旧約聖書には、ノアが方舟に乗せた動物以外は、
ことごとく洪水で死に絶えた、とある。

「魚類も死にましたか?」
「…………」
こんな質問が寄せられてるのだけれど、
だれかまじめに答えてやって。

2011年2月21日月曜日

カサカサに効く薬

忙しいという字は「心を亡ぼす」と書く。
今はまさにそんな状態で、ボクの心はカッサカサ。

だから乾ききった心の大地を少しでも潤そうと、
夜な夜な酒を飲んでいる。ボクも正直つらいんだけど(ウソ)、
カサカサの心と胃袋じゃあ、身体によくないもんね。
だから、いやいや飲んでるの。
屁理屈こきながら……。

原稿書きに追われてると、新聞も読めやしない。
北アフリカや中東あたりでお祭りが始まってたり、
南九州で火山が噴火したり、
ニュージーランドで大地震が発生したりと、
世の中ずいぶん賑やかになってきたけど、
なんか別世界の出来事って感じがする。

もう心が亡びちゃってるから、
革命も反革命も関係ないってか?
菅内閣の支持率が20%切っても
関係ないってか?

半分世を捨ててる身だし、
人間降りちゃってるところもあるようだし、
今はただマシンと化して原稿を書きまくるだけってか?

フランスに帰国したコスプレ娘のAlexiaは、
ノーテンキに「お父さん、早くskypeやろうよ」
などと盛んにせかすけど、もちろんそんな時間はない。

あともう少し。もうひとふんばりで光が見える(ハズ)。
ああ、おいらの、おいらの「明日はどっちだ?」
と矢吹ジョーを気どってはみるものの、
明日なんかなかったりして……。
ならば、今のうちに飲むまでだ。

2011年2月14日月曜日

ホタテの缶詰

部屋に缶詰になって原稿を書きまくっている、
というと、ホテルの一室に閉じこめられ悪戦苦闘している
人気作家みたいだが、今のボクがまさしく
その「……みたい」なのである。

今日半日で、原稿用紙30枚分を書きあげた。
自分としてはかなりのスピードだ。
内容はともかく、気分が乗ってくるとスラスラ書ける。
これも訓練のたまものか。

同じ稼業の女房は、キーボードを両の指で打つ。
ピアノをやっていたからなのか、左右の指が自在に動く。
ボクはというと、右手の指が9割で、左が1割ってとこか。
ほとんど右手で打つので、手首が腱鞘炎みたいになって
ときどき痛みが走る。

連続して泳いでいると、スイマーズ・ハイというような
高揚感に襲われることがある、と以前書いた。
原稿を書いていても似たような気分になることがあって、
たいてい疲れきっているときにそれは起こる。

こんなときは、天才になったような気分で、
何でも書けそうな気がするものだが、
出来上がりを読むと、テニヲハが怪しくて
心底ガッカリする。

若い頃は酒を飲みながら書いたこともあった。
が、この手のものは妙にはしゃぎすぎていて、
読めたものではない。

文章の極意は、などというとずいぶん偉そうだが、
なに簡単なことだ。平易でわかりやすい文章を
心がけるだけでいい。

気負いは禁物。難解な言葉もダメ。
素人や学者先生が気負って書いたものは、
みんなそのたぐいなので、読めばすぐわかる。

人間も同じ。一見、鋭利そのもの、といった人は
実は大したことはない。愚物のごとくホワーンとしていて、
つかみどころのないようなのが一番恐ろしい。
シンプルなものがいちばん深い。







2011年2月10日木曜日

狐狸庵タウンの夜

久しぶりに新大久保の狐狸庵タウン?で一杯やった。
しばらく見ないうちに、この韓国人租界はアメーバのように増殖していた。
最近は、職安通りに千葉や茨城のおのぼりさんたちを乗せた
観光バスまで横着けされるようになったという。

耳に飛び込んでくるのは韓国語と中国語ばかり。
わずかに日本語が聞こえてくるから、衆寡敵せずの状況の中、
わが同胞たちもなんとか命脈を保っているのだろう。

ボクの相方はNHKテレビの『ハングル講座』でもお馴染みの
チョ・ヒチョル先生。来日してからずっとつき合いが続いていて、
ボクの唯一無二の親友といっていい。

二人は大の酒好きで、まるでウワバミのごとく飲む。
いったい酒瓶が何本並ぶのかと、ちょっぴり腰が引けていたが、
やはり半端じゃない。マッコリの瓶が10数本空いている。
お店の名前が「どんどん」。これじゃドンドンいっちゃうよ。

酔いが回ってきたとき、ふと口をついで出てきた言葉が、
「おい、チョさん。竹島を返せよな」
やはり俺は日本人だ。実効支配されてるのがどうにも気に食わない。
「ああ、独島ね。そのうち返してやるよ」
「いや、今すぐ返せ……」
狐狸庵タウンでキツネとタヌキの処士横議。

この町では狗鍋(補身湯)も食べたし、飲み過ぎてゲロも吐いた。
ときどき「少女時代」から抜けだしたような整形美人に遭い、
胸をときめかすこともある。細い路地が入り組んでいる光景は
どこか懐かしく、ニンニクとトウガラシの匂いが寒空に舞っている。

アンニョンハセヨ。
韓国人と同じラテン気質のボクは、この町に来るたびに
故郷へ舞い戻ったような安らぎを感じる。
「竹島は日本のものだからな」
「いや、あれは昔から韓国のものだ」
「ふざけんな、テメエこの、…………△◇※◎@」←ろれつが回らない
ノーテンキな夜はしんしんと更けていった。

2011年2月4日金曜日

禁断の園

久しぶりに築地へ行った。
お供は仏人留学生のAlexia(アレクシア)。
3日後の帰国を前に、世界一の
魚の市場をひと目見せてやることにしたのだ。

Alexiaは魚が好きで、特に刺身が好き。
といわれたって、こちとら貧乏人が
毎晩食べさせてやるわけにはいかない。

で、刺身になる前の原形を見せてごまかすことにした。
今どきの若いもんは、魚の切り身や開きは見たことあるが、
もとの形を知らなすぎる。内陸育ち(ロレーヌ地方出身)のAlexiaが海だとか
生きた魚に縁がないのは理解できるが、
「キャーッ、この貝、大きいね。見たことないよ」
「ウワーッ、このカニさん、動いてるよ!」
と、いちいち奇声をあげるのには思わず苦笑いだ。

築地の次は渋谷、原宿、新宿を回った。
Alexiaはどっちかというと、こっちのほうがいい。
渋谷では「109」に入った。おじさんは初めて。
女の子のためのショップの集合体で、まるで禁断の園だ。
売り子の奇妙奇天烈な格好を見ると、頭がクラクラする。

原宿ではコスプレの店に入った。これもおじさんは初体験。
心臓がドキドキする。いいのかしら、おじさんが入っても?
慣れたもので、彼女はセーラー服の売り場に直行、
セーラームーンみたいな怪しげな服をとりあげ、
「お父さん、これ似合うゥ?」ときたもんだ。

Alexiaはコスプレ大好き人間で、フランスでも
家の中ではセーラームーンを気どってるらしい。
かなり危険なムードだ。

竹下通りを歩くのは10年ぶりくらいだが、
奇抜なファッションの若者たちが次々と押し寄せてきて、
おじさんは身の置き所がなかった。
ここならたぶん下着姿で歩いても、だれも気にとめないだろう。
まさに異界というか魔界と呼ぶべきか、
おそろしいところだ。

Alexiaはセーラームーンの変態バージョンを何種類か
買いたがっていたが、帰りの荷物が重くなるからと、
あきらめたようだ。なにやらホッとする。あんなもの、
フランスへ持っていかれたら、日本は変態の国かと疑われる。

ああ、それでも、日本の変態ファッションは〝クール〟なんだそうで、
そのことを誇りに思っていいのか、悲しむべきなのか、
おじさんの心は千々に乱れるのだ。