2013年2月22日金曜日

仔豚とクロワッサン

ボクが〝Cochon(仔豚ちゃん)〟と呼んでいるフランス人学生のAlexiaが今夏、再来日する。
彼女はリヨン大学の学生で、このたび慶應義塾大学への交換留学が決まったのだ。
彼女がわが家に泊まっていた時は、実によくめしを食った。そしてよく寝た。
だから〝仔豚〟というわけではない。彼女の両親がつけた愛称だ(同じ理由だったりしてw)。

豚のように何でもむしゃむしゃ食べる彼女も、近所のパン屋のクロワッサンには不満だった。
でも、一軒だけ「どこかフランスの味がする」と褒めた店がある。志木駅構内にある
クロワッサン専門店で、ボクにはその味の違いがよくわからなかったが、
たしかにまあまあの味がした。

ヨーロッパに行く楽しみはいくつもあろうが、乳製品と肉加工品、そしてパンのうまさが
群を抜いている。たとえ馬肉入りでもハム・ソーはけっこうな味だし、チーズやパンの
豊饒さといったら言葉がない。ホテルの朝食に出るクロワッサンの美味しさ。あれは
ちょっとマネできないうまさだ。Alexiaが日本のクロワッサンに不満を漏らしたのも
故なきことではない。

クロワッサンはオーストリアのキプフェル(三日月型のパン)が原形で、
18世紀、同国ハプスブルク家のマリー・アントワネットがフランス国王ルイ16世に
お輿入れする時、お抱えパン職人と共にフランスへ持ち込んだといわれている。
真偽のほどは定かではない。なにしろ伝説の多い人だから、噂話に尾ひれがつく。
そのため間違った伝説もある。それをここで訂正しておこう。といっても、
実際に見たわけではもちろんない。歴史的事実を指摘するだけである。

彼女の伝説で有名なのは、革命直前のフランスで民衆が飢えに苦しんでいると聞いて、
彼女が「パンがないのならお菓子を食べればいいのに」と言ったという話。
これは浪費家の彼女が世情にうとく、庶民の生活に無関心だったエピソードとして
広く知られている。しかし、これは明らかに誤伝だ。

誤伝のもとは18世紀の啓蒙思想家ルソーの著作『告白』にある。
ここに、《さる高貴な后(王女)が、『農民にはパンがありません』と言われ、
『ブリオーシュを食べればいいわ』と答えたのを思い出した》というくだりがある。
これはルソーが、1740年、フランスはリヨンで家庭教師をしていた時の出来事を述べたものだ。

このエピソードがいつしかマリー・アントワネットの豪奢な暮らしぶりに重ねられ、
間違って後世へ伝わってしまった。いかにもありそうな話だが、
当時、マリー・アントワネットはまだ生まれていなかった(1755年生まれ)。
《さる高貴な后(王女)》が彼女であるはずはないのだ。
彼女にはさまざまな伝説がついて回る。が、明らかな間違いは正してやらないと、
彼女の名誉にも関わるし、断頭台の露と消えた彼女の魂も浮かばれまい。

ブリオーシュもいいが、久しぶりにおいしいクロワッサンが食べたくなった。
ちょっくら志木駅まで車を飛ばすとしようか。











 

4 件のコメント:

珍しい小鳥 さんのコメント...

老先生こんばんは


クロワッサンは作ったことないです。
バター多すぎて、怖いです。

今日は皆で、栗饅頭を作りました。
栗は入ってません。あんこだけです。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

珍しい小鳥様

あんこだけで栗が入っていなくても
栗饅頭とはこれいかに?

小鳥さんは奇天烈なものが好きですね。

クロワッサンは生地が難しいでしょうね。
バターが怖いというのはよくわかりませんが、
まさか〝饅頭こわい〟の類じゃないでしょ?

カロリーが高すぎて怖い、ということでしょうか。若い娘さんだから、しかたないですね。

でも本場のクロワッサンはほんとうにうまい。
栗なしの栗饅頭もおいしいでしょうけど……

Nick's Bar さんのコメント...

ROUさん、

こんにちは。


志木駅まで車を飛ばす?
電車で行きなさい、電車で。

地球にやさしくないんだから、まったく。

(などと言いつつ、当人はもっと優しくないやつに乗ってますが・・・・)

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

ぼくのきらいな言葉→「地球にやさしい」
「エコ」というのもきらい。

超大型バイク(ボクの車より排気量が大きい)を乗り回し、傍若無人に排気ガスをまき散らしているNICKさんのお言葉とも思えませんね。
あなたの場合は、エコではなくエコエコアザラク、エコエコアメラクでしょ(笑)。←ああ懐かしい

最近、年のせいか、すぐ車に乗ってしまいます。歩くのがおっくうなんです。そのうちおんぶしてもらうようになるので、よろしく。