2013年5月29日水曜日

ファットボーイのjazzyな生活

レコードプレーヤーがぶっ壊れてからは、あまり音楽を聴かなくなった。
聴いていたのはもっぱらジャズ。40年前はよく新宿の「木馬」や「DUG」、吉祥寺の
「ファンキー」や「サムタイム」に通っていた。それと、当時住んでいた江古田には
「シャイニー・ストッキング」というジャズライブの店があった。まだ売れない頃の金子晴美
などがステージで歌っていて、ボクはジンライムなんぞをチビチビやりながら、心地よく
からだを揺らしていた。

ジャズを聴き始めたのは10代の終わり頃。ジャズキチの友人に勧められた1枚のレコードが
きっかけだった。『バド・パウエルの芸術』(1947年録音のルースト盤)というもので、その中に
おさめられている「アイ・シュッド・ケア」という小品に、それこそガツンと一撃を喰らってしまった。
アップテンポの曲が多いアルバムの中で、唯一と言っていいほどスローテンポの、何と言おう、
叙情性あふれる珠玉の一曲なのである。ボクはあまりの美しさに泣けてしまった。

ピアニストから入ったジャズの世界なので、まずは名だたるピアニストを総なめにした。
その後、ビリー・ホリデイなどヴォーカリストに凝り、またまた総なめにした。
読書と同じで、濫読しているうちに自分の好みがハッキリしてきて、
たとえばビル・エヴァンス(p)が好きになったら個人全集を買い込むみたいに
エヴァンスばっかり聴く、という生活を繰り返した。一時、アート・ペッパー(as)に
惚れ込んで、高価なアルトサックスを衝動買いしてしまった。
今は押し入れの中で埃を被り、年に1回虫干しされ、磨かれる日を待っている。

「で、結局のところ、誰が一番好きなの? ベスト3を挙げてくれ」」
と問われたら、さて何と答えよう。好きなアーティストはいっぱいいて、
その誰もがボクの不毛な青春時代を彩ってくれている。彼らの音楽がなかったら、
ボクの10~20代はほとんど灰色一色に塗りつぶされていただろう。

マイ・フェイヴァリット・アーティストは、
エリック・ドルフィー(as, fl, bclなど)
チャーリー・ミンガス(b)
アート・ペッパー(as)
他にもマイルス・デヴィス(tp)やコルトレーン(ts)、エヴァンスやトミー・フラナガン(p)なども
捨てがたいし、レス・ブラウンやカウント・ベイシーのビッグバンドも忘れがたい。むりやり
3人選んだが、こればっかりは甲乙つけがたい。モダンジャズの世界は実に〝豊饒の海〟
そのものなのだ。

これは余談だが、静岡市の七間町に「維也納(ういんな)」という喫茶店があった。
かつて芹沢銈介や柳宗悦らが集ったという名店で、店主の名は白沢良。その息子が
崇で、ボクはけっこう仲がよかった。維也納の2階には同じ経営の「パーソン」という
ジャズバーがあり、ボクは出張の折などに立ち寄っては崇氏とバカッ話に興じていた。

崇氏曰く。
「外国からけっこう有名なアーティストが来ては店に顔出してくれてね。即席の演奏なんかも
してくれるんだ。で、いつしか親しくなっちまう。ある時、ミンガス(レイ・ブラウンだったかも)
が機嫌悪そうにしてるわけ。どうしたの、って聞いてもそっけないの。そんな時はね、俺は
ヤツの手を引っぱってソープへ連れてっちゃう。1本抜いてやる(下品でゴメン)と俄然機嫌が
よくなっちゃうんだ、アハハハ……」
軍隊だけではない。ミュージシャンにも時には〝慰安婦〟が必要、という下世話なお話。
ボクと崇氏はそんな楽屋話を肴にしては、ゲラゲラやっていた。

ところ変わって5月19日、沼袋の「オルガンジャズ倶楽部」で、NICKさんのライブが
おこなわれた。メンバーはバンマスがNICKさん(org)、ギターがテーラー井田、
スペシャルゲストがJun Saitoこと斉藤純(ds)という顔ぶれだ。NICKさんはもともと
ピアノ弾きだが、最近はハモンドオルガンに凝ってしまい、個人教授(若い美人です
までつけるという〝ハマり〟よう(誤解を生むような言い方するなよ)。
んなわけで、夜な夜な本腰を入れていた誰と? クドイっつーの)。

演目は「バイバイ・ブラックバード」とか「ブルー・ボッサ」、「枯葉」、「チュニジアの夜」
といったスタンダードナンバーが主体で、さすがにニューヨークで活躍していたという斉藤氏
のドラミングは群を抜いていたが、アマチュアのテーラー井田(本業は仕立屋さんです)
の軽やかで歌心のあるギター(見た目はジム・ホールそっくり。特に頭のてっぺんが)
もよかったし、時々演奏に加わり万丈の気を吐いたテナーサックスの相沢某もよかった。

NICKさん? もちろん、最高でした。ハーレー乗ってるとイヤでも出っ腹が目立つけど、
オルガンは醜い腹を隠してくれるもんね。演奏はともかく(何がともかくだよ!)、
固まってるところが、もうサイコーでした(どーゆー意味だよ! ホントに聴いてたの?)。


←ふだんは商社マンで飲んべえ(余計だろ!)
NICKさん。この日はプロのドラマーと共演する
ということで、かなりコチコチに固まってた(←写真)。
でも、演奏はよかったよ。ちゃんと音出てたし(当たり前だ)。
余技の域を超えてまるでyo-gi(ヨガ行者)になってたな。
さてドラムスのシンバルの位置に注目してくれ! 
ヨコではなくタテにおっ立てるんだ。珍しいね。
斉藤氏独特のやり方なのだそうです。
photo by 畠山一郎



 

8 件のコメント:

Nick's Bar さんのコメント...

ROUさん、

こんにちは。

写真を送ってくれって言うから、何かと思えば・・・

実名は出すは、顔写真は出すは、これで私のプライバシーは完全に失われたわけですな。(ま、いいけど)

ご指摘の通り私の演奏はともかく、共演者の演奏に助けられ救われなかなか楽しいLiveとなりましたよ。ご臨席賜り恐悦至極でございます。

たしかに「コチコチ」でしたな。本人本番中は全く気が付いておりませんでしたが、終了後、昔からの友人に「お前の緊張顔はかなり笑える」とコミックバンドかと思われるような発言を賜りました。

後日DVDを確認しましたが、これが自分かというくらい「真面目」「必死」「冷や汗もん」でプレーしてますね。次回はもう少し余裕をかましたいと切に思うのであります。

今回のLive、Liveその物の出来は皆様の評価にお任せするとして、己の演奏については100点満点の29点という所、すなわち、ぎりぎり「落第」でございます。

お越しいただいた皆様がこれを見たら怒るでしょうねぇ・・・本人が落第だと言っている演奏を聴かされたんですから。(まぁ、そんなに読者も多くないから問題ないと思いますど。)

しかし、それをもってしても余りあるJun Saitoこと斉藤純氏の華麗なるドラムをお聴きになられたわけですから、くれぐれも「金かえせ!」などとおっしゃらぬようお願い申し上げます。

で、気が早いんですが、性懲りもなくまたやります。今度は絶対合格点採ってご覧に、いや、お聴かせいたします。

平成25年8月25日(日)
沼袋Organ Jazz倶楽部
開場 午後1時
開演 午後2時
チャージ ¥2500+ワンドリンク

今回と同じメンバーでお送りいたします。

などと、図々しく宣伝までしてしまいました。


あ、あと、まだ御尊宅に所有されておられます聴けなくなってしまったLPは拙宅にて無期限、無料にて保管して差し上げますので、近々引き取りに伺います。

幸いにも拙宅には30年もののターンテーブルが存命でございまして、貴重な音源に息を吹き込み再生させることが可能でございます。これでこそ先達の偉大な演奏を生き返らせることとなり、LPも本望というもの。

アンプも時代錯誤な真空管(プリもメインも)ですので、なんか音が良いような気がします。(多分、気のせい)

では、次回のお越しもお待ちしております。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

NICK様

長~いコメント、恐悦至極に存じます。
わたくしからも一言。
「金かえせ!」

さて、次回の公演予定まで、他人のブログを
借りてしっかり宣伝してくれました。よからぬ
友人たちとつき合っているおかげなのか、
だんだん面の皮が厚くなってきたようです。

ジャズのレコードに関しては、
近くデラックスな音響設備を入れる予定なので、ご心配なく。そのうち、そっちに拉致された名盤たちも引きあげます。



木蘭 さんのコメント...

しまふくろうさま。

こんばんは(*^^*)

ジャズは~楽しそうに演奏される方の様子がとっても素敵だなぁって思います(*^^*)



まあまあ、どこまでご縁があるのでございましょ~。

江古田はよく「通り」ましたよ(笑)


私の青春の中心にも「音楽」がありました。

吹奏楽でしたけれどもね(^_^;)

中学からクラリネットを担当し、
社会人になってからも豊島区吹奏楽団という一般バンドに入りました。


江古田の駅を降り日大芸術学部を右折。

ずっ~と坂を下っていくとある豊島区立第十中学校によく練習に行ったものです。

武蔵野音大にも何度も(#^.^#)


東上線、西武池袋線、丸ノ内線はしょっちゅう使っておりました。

26歳くらいまでは都民だったので、
どこかですれ違っていたかもしれませんね。



私のクラリネットも、
たまには風にあててあげなくちゃ。

リード、ぼろぼろかもですが(笑)


ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

木蘭様

おはようございます。

奇縁ですね。江古田の第十中学に〝通って〟
おられたとは。あの中学は今は廃校になって、
明豊地域スポーツクラブというものになって
いるようです。

ボクは江古田に7年ほどいましたが、前半は
小竹町に、後半は向原に、つまり第十中学校の
真ん前のアパートに住んでいたのです。
いや驚いた。すれ違っていた可能性は大ですね。

その後、東上線の上板橋に移り、結婚と同時に
和光市に引っ越してきました。

ボクのサックスはモノになりませんでしたが、
木蘭さんのクラリネットは〝本物〟のようですね。

NICKさんらとバンドを組んでいた時は、
ボクはリズムギターとヴォーカルを担当していました。ギターはたいしたことありませんが、
歌のほうは大変なもので(自分で言うな!)、オバサンたちに絶大な人気がありました。

若い娘にはサッパリですが、なぜかオバサンとかオバアサンには受けるんです。悲しい……



木蘭 さんのコメント...

しまふくろうさま、おはようございます。

今日は住職夫妻がおでかけなので、
気楽におひとり様をしている木蘭でございます(笑)


まあまあ。またもや奇遇ですね~


私が通勤で使っていた駅が、
東武練馬と上板橋でした(笑)

丁度中間くらいに住まいがありましたので、
行く時は池袋に一駅でも近い「上板橋」に。
帰りは夕飯などの買い物をするために「東武練馬」の北町商店街を通っていました。
(ローカルな話題でごめんなさい)


上板橋の「石田屋」さんの栗饅頭。
また食べたいです~(#^.^#)


十中が廃校とは・・・少し寂しいですねぇ(;_:)

私の友達にも十中出身の人が結構います。

なかなか会えないでいますが、
こうしたお話をしていると~楽しかった青春時代が昨日のコトのように思い出されます(*^^*)


歌がお上手とは~ひとつの「徳」だと思いますよ。

聴く人の気持ちを和ませたり、心を温かくしたり。


私も一度拝聴したいものです(*^-^*)


今の若い女性は~歌は二の次ですから(笑)。


おばちゃんやおばあさまたちのほうが、
「本物」を御存知、ということでしょう。

どんどんおばちゃん、おばあさまのファンを増やしていって下さいね(笑)

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

木蘭様

またまた驚きであります。

ボクは上板橋の北口で降りて少し行った中台3丁目に住んでいました。ちょうど日大豊山高の校庭を見下ろす高台のところです。

南口のほうはほとんど知らず、石田屋も知りません(ゴメンナサイ)。栗饅頭やどら焼きがうまそうですね。こんどNICKさんとタンデムして買ってきます(笑)。

歌がうまいとは言っておりません。
ただ声はでかく、よく通ります。

で、今はよく自室でギターを弾き、
近所迷惑も顧みず大声で歌います。
時々、ヒマそうなNICKさんを呼びつけ、
ピアノの伴奏をさせます。

レパートリーは比較的広いです。演歌も歌います。昨日、バルコニーで女房のズロースなんぞを干しながら田端義夫の「かえり船」を歌っていたら、
♪霞む故国よ 小島の沖じゃ……
のところで、
不覚にも涙が出てきてしまいました。
もう歳ですね。涙腺がぶっ壊れています。

おばちゃん、おばあちゃんもいいですが、
たまには若い娘も……(笑)。

木蘭 さんのコメント...

しまふくろうさま、こんばんは。

連投に~少しばかり気が引けている木蘭でございます。


気が引けている割には~図々しく書き込んでおりますが(笑)


もう~、なんといってよいのでしょ~


中台は私の兄が住んでおりましたし(笑)


北口のイトーヨーカドーには、盆暮れに洋服を買いに行った記憶があります。

特別な時くらいしか洋服を買ってもらえない時代でした(^_^;)

社会人になってから、
新星堂(という名前だったと思うのですが・・・)へ、レコードを物色しにいっておりました。


毎日のように通っていた駅や道。

そこにはほんとうにささやかだけれども「縁」によって作り上げられている人生の「道」も存在するものなのですね。



今度ハーレーで石田屋さんにお買い物に行く時は、私の分の栗饅頭も忘れないで下さいませね(笑)



あ。またもやこんな時間に。

「くまもん」が一回り大きくなってしまわぬうちに~(笑)、おやすみなさい。

ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

クマモン好きの木蘭様

おはようございます。
連投はとても嬉しい。肩を壊さぬ程度に
大いにやってください。

お兄様が中台にお住みになっていたとは。
驚きです。ご近所さんだったんですね。

それとイトーヨカドー。とても懐かしいです。
どこかの売場で若き日の木蘭さんとすれ違って
いたかもしれませんね。

引っ越して以来、上板橋には行っていないので、どこをどう曲がって自宅に帰り着いたのか、記憶が定かではありません。ただ小学校の向かいの交番を右折したことだけ覚えています。

石田屋の栗饅頭はぜひとも食べねばなりませんね。家僕のNICKさんを呼んでハーレーを出動
させましょう。豆腐買ったり饅頭買ったり、
ハーレーは大忙しです(笑)。