2013年11月17日日曜日

草食系って実はパワフル?

リヨン大学から慶大に留学している仏人のAlexiaは梅干し以外は何でも食べるが、
特に魚介類が好きで、昨日はいっしょにお刺身用の魚を買い出しに行った。

Alexiaはフランス東部のロレーヌ地方出身。内陸部だから、昔から肉料理ばかり食べて
きた。そのため、日本への留学の一番のたのしみは寿司や刺身など、新鮮な魚を
腹いっぱい食べることだ、と彼女は言う(食べさせるほうは大変だけどね)。
Alexiaはコション(cochon=豚)の愛称で呼ばれているように無類の健啖家で、
何を出しても「これ、おいしいね」と平らげてくれる。
パパさん兼料理人のボクとしてはこれほど嬉しいことはない。

Alexiaは現在21歳。日本語は相当上達していて、昨日はオランド政権のこと、EUのこと、
移民問題、とりわけ不法移民のこと、慶大での授業のこと、彼氏のこと……ありとあらゆる
問題について話し合った。口癖は「もうフランスはだめだね」の一言。若者の失業率は高いし、
モラルは低下してるし、治安もわるくなっている。「なんでドイツとフランスだけがギリシャや
スペインを助けなくてはいけないの?」と、最後はついグチも出る。

彼女の姉のCarol-Anneは中国に5年間留学したことがある超美人で、中国語はぺらぺら。
他に英語、ドイツ語に堪能で、今はベルリンで翻訳の仕事をしている。なぜドイツ
で働いているのかというと、ロレーヌ地方はドイツと国境を接していて、アルザス・ロレーヌ
といえば、独仏でいつも領有を争っていた歴史的な場所。ドイツにはなじみが深い。

それとフランス国内に職がないという経済事情もある。そしてこれが肝心なところだが、
Carol-AnneはいわゆるヴィーガンVegan(絶対菜食主義者)なのだ。ヴェジタリアンは
卵や乳製品は食べるが、その極端な一派のヴィーガンは一切の動物性食品を受けつけ
ない。もし彼女がわが家を訪ねてきたら、いったい何を食べさせたらいいのだろう。
ボクはそのことを考えただけで、途方に暮れてしまうのである。

そもそもヴィーガニズムとは何かというと、「人間は動物を搾取することなく生きるべきだ」
とする主義で、日本の調査捕鯨を妨害するシー・シェパードの連中のほとんどは
ヴィーガンといわれている。エコロジーや動物愛護の精神が極端に走った例だから、
単純といえば単純なのだが、ガチガチのリゴリズムは扱い方がやっかいだ。

バターやチーズなど乳製品の宝庫であるフランスは、当然ながらヴィーガンに対しては
冷淡だが、ドイツは逆にレストランなどでもヴィーガン用のメニューなどが充実している。
Carol-Anneのボーイフレンドはさらに輪をかけたヴィーガンの最右翼だから、
ドイツしか住むところがない、というのがどうやら実情らしい。

「私はヴィーガンなんていや。チーズは大好きだし、お刺身やお寿司が食べられないなんて
考えただけでも目の前が真っ暗になっちゃう」と言いながら、大皿の上の残った刺身を見て、
「これ、だれも食べないの?」
「ああ、食べていいよ」
「ホント? ありがとぉ!」
と、さも嬉しそうに箸をのばす。
(この仔豚ちゃんは絶対ヴィーガンにはなれないな)
ボクはその時、確信した。

ヴィーガンについてもう少し付け加えると、トライアスロンやウルトラマラソンといった
耐久レースのトップ選手にはなんとヴィーガンが多いのだという。動物の肉こそが
パワーの源だとする観念が徐々に覆されつつある。現に、重量挙げやボディビル
の選手の中にも、ヴィーガンに転向するものが増えているという。

ボクは反禁欲主義の肉食系だが、ヴィーガンに転向すれば高血圧や心不全、
脳梗塞や大腸ガン、前立腺ガンなどになる確率が激減するのだという。
「転ぶべきか、転ばざるべきか。それが問題だ」
一瞬、ハムレットの心境になりかけたが、結局、うまいチーズや焼き鳥、
分厚いロースのトンカツが食べられないくらいなら死んだほうがまし、
という気高い結論に落ち着いた。

そうだ、Carol-Anneが来たら、Alexiaがきらいな梅干しと納豆をごちそうしてやろう。
それとボクの育てた生育不全のミニトマト。きっと感激の涙を流してくれることだろう。



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動物性のものは一切ない

2 件のコメント:

木蘭 さんのコメント...

しまふくろうさま、こんばんは。(*^^*) 

作る側にとればなんでも「おいしい」と食べてくれることほど嬉しいことはありませんね。

よい「娘さん」です。(*^-^*)


ヴィーガンですか・・・。


日本では鳥や豚や牛、そして魚などを獲って食べます。
今はあまりしないかもしれませんが、
昔は食材となった生き物に感謝し、
無駄にする事をしないようにしてきました。

しかし外国では贅沢のためにただ皮をはぐだけ、ただ油を採るだけ。あとはすべて捨ててしまうといったやり方です。もちろんそうでない国もあるとは思いますが。


生き物の命をとらない、という意味であれば、仏教では草木にも生命ありと説くので~もうたべるものがなくなってしまいますね。(^_^;)


ヴィーガンに転向するトライアスロンなどの競技者って、なんとなくわかる気がします。
どちらも禁欲的じゃないとできないことですものね。

自分を追い込むためにヴィーガンになるのでしょうか。


私は、お肉は好んで食べませんが、たらこやお魚は好きです。

う~ん。(-_-;)
やっぱり私にヴィーガンは無理ですわ。(笑)



ROU.SHIMANAKA さんのコメント...

木蘭様
こんばんは。

山川草木悉皆成仏。
この世の生きとし生けるものには
すべて仏性が宿る、という考え方ですね。

ボクも年を重ねるにつれ、
そのことが朧気ながらも分かってきたような
気がします。

ペリーが来航した時、
目的のひとつは捕鯨船団の補給基地の確保でした。

当時、米国は有数の捕鯨国でしたが、
鯨油を絞るのが目的で、油以外は海に投棄していました。

日本の捕鯨は肉だけでなく、骨からヒゲまですべて使い尽くします。それが殺生したものに対するせめてもの供養になりますからね。

木蘭さんはタラコが好きなんですね。
タラコかぁ……なぜか木蘭さんがタラコを
ほおばっているところを想像すると、笑っちゃいます。なぜなんでしょうね。木蘭さんとタラコはあまりにハマりすぎてるというか、
ウーン……参ったな(笑)。


タラコ、ボクも好きですよ。でも、
魚卵系は医者から控えろと言われています。

控えろといわれると、なおのこと食べたくなるのが人情で、ついパクパク食べてしまいます。

今度、機会があったら「タラコ定食」を
ごちそうします。そのあと、寄席に行って
ゲラゲラとバカ笑いしましょう。