2015年3月17日火曜日

「社会の窓」あいてますよ

見知らぬ人に、いきなり、
「社会の窓、あいてますよ」
と言われたら、あなたどうしますか?

東京人は概ね、あわててファスナーを引っ張り上げ、御礼の言葉もそこそこに
その場を立ち去るのだそうです。ボクも何度か経験がありますが、ひたすら恐縮し、
照れ笑いでその場を取りつくろう、というくらいが精一杯でした。
その点では、生真面目な東京人の感性に近いようです。

生粋の大阪人の場合はどうでしょう。
「ズボンのチャックあいてますよ」
と言われると、彼らは慌てることなくむしろ堂々と、
開けてんねん。風通してんねん
などと言い返すらしいです。指摘したほうも負けじと、
「風邪引くから、はよ閉めや」
などと応じるといいますから、すでに立派な掛け合いになっています。

「寝癖ついとるよ」
と言われると、
「アンテナ立ててんねん」
と言い返す大阪人というのは、実に何と言いましょうか、
サービス精神の権化とでもいうべきなのでしょうか、
われら関東人とはまるで異質の人種のように思えます。

ボクは仕事で数え切れないくらい大阪に出張しましたが、
あの厚かましくてコテコテの大阪人気質には最後までなじめませんでした。
大阪人の落語や漫才もいっこうに笑えなかったのです。

でも、「風通してんねん、文句ないやろ!」という、開き直ってまで笑いを
取ろうとする貪欲で強靱な精神にはただただ感服してしまいます。
あの巧まざるユーモア精神さえあれば、逆境を瞬時にプラスに変えてしまう
のではないでしょうか。おそるべし大阪人!そして愛すべし大阪人!

「社会の窓が開いてますよ」を英語では Your fly is open.といいます。
この場合のflyとは蝿ではなくズボンの前チャックのことです。

元イギリス首相のウィンストン・チャーチル卿にもこんなエピソードがあります。
演説するため貴賓席で出番を待っていた78歳のチャーチルが、側近から1枚の
紙切れをそっと手渡されます。鷹揚に受けとったチャーチルが開くと、そこには、
「閣下、畏れながら〝社会の窓〟が開いておられます」と書かれてありました。
チャーチルは少しも慌てず、その紙切れの端にこう書きつけ側近に返したそうです。
Never fear , Dead birds do not fall out of their nests.
(心配しなさんな、死んだ鳥は巣から転げ落ちたりはせんよ
チャーチルには大阪人の血が流れていたのかもしれません。

チャーチルには他にこんなエピソードもあります。
アスター子爵夫人ナンシーとの会話で、夫人が
「ウィンストン、もし私があなたの妻だったら、あなたのコーヒーに毒を入れますわ」
チャーチル、応えて曰わく。
「ナンシー、もしあなたが私の妻だったら、私は喜んでそれを飲むでしょうな」

イギリス人は何よりユーモアを大事にするといいます
どんなに立派な大学を出て、どんなに世間的な名声があろうとも、
ユーモア精神の欠如した人間はまったく評価されません。ユーモアは深い教養から
発せられるもので、人間の厚み・奥行き、余裕の象徴でもありますから、
ただ生真面目でユーモアのかけらもない日本の政治家みたいな人種は
薄っぺらで無教養な人間と見なされてしまうのです。

どこの大学を出た、などという「教育」のあるなしなどどうでもよろしい。
問題は「教養」の深浅なのです。
わが師匠・山本夏彦も言ってます。
まじめな話を真顔でするのは失礼だ。常に笑いを帯びなければならない




←dead birdsとはすごい言い方だな、
と感心しつつ、わが逸物をしばし眺めやる。
ウーン……もうとっくに死んどる

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