2015年9月21日月曜日

筋肉おじさんと哲学少年

おじさんはみな、いわゆる「おじさんズボン」をはいている。
上はチェックのポロシャツで下はダボッとしたチノパン。
それで決まってシャツはズボンにinしてる。

ボクはおじさんズボンははかない。
夏場はTシャツにショートパンツ。晩秋あたりからボタンダウンのカジュアルシャツか
長袖Tシャツ、そしてジーンズという組み合わせになる。これらほとんどがユニクロで、
ユニクロは創業以来の熱烈ファン。Tシャツにしろジーンズにしろ、肌ざわりや伸縮性
が抜群にいいのだ。トマス(居候)の着ているヨレヨレのそれに比べると、
質の高さが群を抜いている。

「お義父さんの世代でタンクトップ着てるというのは珍しいですよね」
娘婿のY君が女房にそっと耳打ちしたという。褒めてんだか貶してんだか
サッパリわかりませんが、たしかに団地内でタンクトップを着ているおっさんは
かなり少数派だ。元アメフト選手のY君は図体がでかいこともあってか、
大変な汗っかき。ボクも汗っかきでは人後に落ちず、酷暑の夏を過ごすには
タンクトップは欠かせない。

精神の若さは必ず外見にも反映する。
いわゆる〝おじさんファッション〟がいやなのは、
そこにピンと張りつめた緊張感がないからだ。
ボクは体育会系の人間なので、ヒマさえあれば身体を鍛えている。
ブヨブヨのお腹に細い腕では、いざとなった時に闘えない。

去年、深夜に騒ぐ若者に天誅を加えたことで警察沙汰になった。
検察まで送られ、運良く不起訴にはなったが、いつまたこんな事件に巻き込まれるか
わからない。所詮この世は「常在戦場」。身に降りかかる火の粉は自分で払わなくては
ならない。そんな時のために、日頃から闘える身体をキープしているわけで、
筋力トレーニングに腹筋、背筋、そして体幹の鍛錬は必須なのだ。

ボクは子供の頃からジーンズ派で、死ぬまでジーンズで過ごそうと思っている。
特に〝ファッション〟にこだわっているわけではない。むしろ関心がないと言っていい。
ただ自分に似合いそうなものを身につけている。また、オール・ユニクロ製だから、
コスト的に見ても相当安く上がっている。

話が変わるが、19日、ラグビーW杯初戦で、日本代表(世界ランキング13位)が
過去2回の優勝経験をもつ南アフリカ(同3位)に34対32で逆転勝ちした。
ボクは後半10分過ぎからの試合をテレビ観戦していたのだが、残り時間
が数秒というところで逆転トライした時は、思わず飛び上がって、
「ヤッターッ!」
と叫んでしまった。現地(英国ブライトン)で観戦していた日本人の中には、
涙を流していたものもあったが、ボクも胸に熱いものがこみあげてきて、
思わず、
「トマース! 日本は勝ったぞォ! ウォー、ついにヤッターッ!」
と叫んでしまった。自室から飛び出てきたトマスは、すでにケダモノ化している
〝父ちゃん〟を見て目を白黒。テレビ画面を見て事情がわかったのか、
冷ややかな目で一瞥しニヤリと笑った。

トマスは「スポーツは苦手。好きなのは〝哲学〟」なんて言ってるくらいだから、
サッカーにもラグビーにも関心がない。
「哲学って、いったい誰を読んだんだよ」
と、いくぶんからかい気味に訊いたら、
ハイデガーが好きです……」
「ハ、ハイデガー…………」
ボクは口あんぐり。学生時代に『存在と時間』に幾度か挑戦したが、
さっぱり理解できなかった。こんな〝ひょうろく玉〟がマルティン・ハイデガーかよ。
唖然茫然……

筋肉マッチョの右傾化おじさんと、チェコの哲学少年。
この2人が川越を散策してきた。連休の日曜なのでどこも人・人・人の波だ。
おじさんはラグビー初戦のことで頭がいっぱいだったので、
もう見飽きた蔵造りの街(←生まれ故郷だもの)を適当に見物したあと、
「トマスちゃん、そろそろ帰ろうかねェ?」
猫なで声でそう言うと、少年は黙ってコックリ。
ビュンビュン飛ばす帰りの車の中では助手席でスヤスヤとお眠り遊ばしていた。
きっとトマスの夢路は〝哲学の道〟を辿っていたに違いない(プッ)。



←川越「喜多院」にて、グラサン姿の哲学少年。
ボクにはただのすけこましのアンちゃんに見える



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